ここもロクの小屋
69個め
お昼に食べ過ぎました。晩ご飯ちょっとしか食べられなかった。そしてまだお腹がぱんぱんです。
久しぶりにあんなに食べたなあ。
そんなわけで食べ物の話。遙か3の望美ちゃん。
2月14日を控えた女の子達は忙しく悩ましい。
「みんなで集まって試作しようって話があるんだけど」
参加しないかと友達に誘われた。試作とはもちろんチョコの試作で「本命には手作り派だけどいきなり本番は自信がないの」というメンバー同士助け合おうということになったのだそうだ。
望美も本命には手作り派だし、自信がないのというのも同じだった。
けれど、望美が首を振ったのは、縦にではなく横にだった。
「私は買おうと思っているから」
「あれ? でも望美って彼氏いたよね。手作りしないの?」
彼氏はいる。手作りしたいなとは思っている。でもやっぱり望美は断った。
「味見係がいるなら行くよ」
とは言ってみたけれど。
この時期のお菓子売り場は華やかで可愛くて歩いているだけでも楽しい。これも美味しそう、これも素敵とあれこれ見て回りながら、望美はため息をついた。
望美だってあげるなら手作りにしたいなとは思う。きっと手作りの方が喜んでくれるだろうとも思う。でも、どうしても手作りする気にはなれない。
「ぜったい譲くんが作った方がおいしいもんなあ」
手作り用品が並んでいるコーナーを見やって、望美は深く深くため息をついた。
譲のことだから、望美が作ったものがどんな出来でも「おいしい」と言ってくれるだろう。喜んで食べてくれるだろう。だけど、それではだめなのだ。譲がよくても望美が納得出来ない。
たとえ、譲より美味しいものが作れなくても、せめて望美自身がおいしいと思えるものでなくてはあげられない。そして、今の望美ではまだまだまだまだ修行不足なのだった。
「来年はがんばろう」
ぐっとこぶしを握りしめて気合いを入れる。だけど今年はこれでいこうと、望美はチョコを一つ手にとった。
069 事情
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譲くんがバレンタインに手作りチョコをもらえない事情
いつかはもらえると思うよ。きっとおそらくたぶんめいびー。