ここもロクの小屋
68個目
今日はけっこう寒いですね…………。
日差しに油断して、外回りの作業をやりかけたら、風の冷たさに心を折られました。
でも寒い寒いって言ってたら、すぐ暑くなるんだろうなあ。
寒さのせいではありませんが、小話を書いたのに更新するのを忘れていました。
今日中に思い出してよかった。
もったいない。
と、言われてしまった。
同僚の女の子達に。
カオルとつきあっていることを白状させられたら、次は馴れ初めだった。こういうとき、女同士というのは結構容赦がない。根掘り葉掘り尋ねられたことに対して、包み隠さず全て申し上げたところ、先の言葉をいただいてしまったのだった。
カオルと知り合ったのは14歳の時。転校先の学校に彼がいた。同じクラスで、修学旅行の班も同じ。そして卒業するまでずっとクラスメートだった。
けれど、カオルとつきあいだしたのは卒業したずっと後のことだ。卒業して大人になって、それぞれ自分の仕事を持ってそれからのこと。
同僚の彼女達曰く、それがもったいないのだそうだ。
学生時代のおつきあいが一番楽しいのに。
一緒の登下校とか、部活の応援とか、文化祭などの学校行事とか、それこそ卒業とか、いろんなイベントがあるというのに。
何より学校に行くだけで毎日会えるというのがおいしい。
どうして学生のうちにおつきあいしておかなかったのか。
「青春時代の無駄遣いよ!」
とまで言われてしまった。
確かにと思う。
学生自体におつきあいを始めていれば、確かに楽しかっただろう。苦労しなくても毎日会えるというのは、確かにおいしい。
でもなあとルナは隣を歩くカオルの姿を見上げた。カオルはまた忙しい仕事の合間をぬって会いに来てくれたのだ。
学生時代よりもラインの細くなったあごが目に入る。今の二人の身長差はそのくらいだ。出会った頃は見上げなくても目があった。
その頃のことを思い出しながら、ルナはやっぱり、でもなあと思った。
学生時代に恋人としておつきあいをしていたら、それは確かに楽しかっただろう。でも、友達としての学生時代だって充分楽しかった。別に青春の無駄遣いなんてしてないと断言できる。
それに、そんなに早く恋人になってしまっていたら、友達としてつきあった期間がものすごく短くなってしまう。何がもったいないってそっちの方がもったいないんじゃないだろうか。
だって、デートとかイベントとか恋人としての日々は。
「どうかしたのか?」
あんまりじっと見ていたから、カオルに気づかれてしまった。ルナは目にいたずらっぽい光を閃かせると、カオルの腕に抱きついた。
「いっぱいデートしようって思ったの」
「どこか行きたいところでもあるのか?」
「もちろん! たくさんあるわ」
つきあってくれるでしょう?と、カオルの腕にしがみついたまま尋ねると、当然という言葉が柔らかく降ってきた。
別にもったいなくなんてない。
だって、恋人としてのつきあいはこれからずーっと続くのだから。
068 青春
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