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ここもロクの小屋

更新がない日のつぶやきとか備忘録
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忙しくなる前に 

 今日は休みを取りました。

 ここのところの暑さで体調があまりよくないので、のんびりしようかなと思って。
 でも一日ごろごろだけするのももったいないので、クローゼットの中を掃除しました。たまには風を通さないと、カビとか恐いですものね。
 暑いので、完全にはできませんでしたけど。

 本格的な掃除は秋にやります。

 

 体調の方は、戻ったのか戻らないのか微妙なところです。
 水を飲みすぎているのか、胃が重くて。

 でも食べないとよけいにだめになるので、食事はちゃんととっていますよ。
 まだまだ暑さは続くのに、これからが本番だというのに、今へばるわけにはいきませんもの。

 皆様もご自愛くださいませ。

 

 ではお題8つめです。


 

 来客だと告げに来てくれたのは、最近入ったという女性社員だった。
 その顔がやたら赤く上気していたので、カオルは眉をひそめ立ち上がった。
 かろうじて舌打ちやため息をこぼすのはこらえた。彼女はただ自分の仕事をしただけで何も悪くない。悪いのは彼女に前もって断りをいれておかなかった自分だ。
 客を通したという応接のドアをノックなしで開けて、カオルは軽く驚いた。
 客がたいして広くもない部屋の中をうろうろと落ち着き無く歩き回っていたからだ。いつもなら、たいして上等でもないソファの上でふんぞりかえり「遅いぞ」と偉そうに言い放つ奴なのだが、今日はカオルが入ってきたことにも気づかないようだった。
 厄介ごとか。
 カオルは低くうなった。常にも増してうっとうしいことになりそうだ。気づかれないことをいいことに回れ右で部屋を出ようとしたところで、しかし運悪くその客が顔を上げた。

 

「婚約解消だって言うんだ!!」

 

 誰がそんなことをこいつに言ったのか、それは問わなくてもわかるくらいの関係ではあった。
 だが、そんな話を持ってこられるような関係ではないとカオルは思う。どう考えてもそんな話の相談相手として自分は適切ではない。いや、仮に適切であったとしても相談にのりたくはない。はっきり言って迷惑以外のなにものでもない。
 帰れと一言で会話を終わらせ、カオルはすぐにでも仕事に戻りたかった。しかしカオルがしたのは、入り口に近い方のソファに座ることだった。
 それで帰るような相手なら苦労はない。帰れ帰らないの押し問答をするよりも、相手の気の済むまでしゃべらせた方が結局は面倒は早く済む。そのことを、それなりに長くなったつきあいの中で、カオルは知りたくもないのにわかってしまっていた。
 カオルが座っても客は座らなかった。カオルも勧めはしなかった。そうして相変わらずうろうろと歩き回りながらそいつがまくし立てたことは、やはりくだらないことだった。
 恋人にプロポーズをして受け入れてもらえた。両家の顔合わせも済んだ(ちなみにこの辺りの顛末もカオルは聞かされていて知っている。知りたくもなかったのに)。そしていよいよ世間にそれをお披露目しようという段になって、婚約破棄を言い渡されたというのである。
 その理由というのが。

 

「どうしても婚約発表記者会見は嫌だって、聞き入れてくれないんだ」

 

 いらいらと爪をかみながらまくしたてるこの男は、どういうわけだか今や銀河でも指折りの有名人でしかも人気者になっている。世の中には物好きが多いものだとそれについてカオルは静観しているが、自称世紀の大スターは、スターにはスターの悩みがあるとか言って、こうしてしょっちゅう厄介ごとを持ち込んでいくるので、スターなんかくそくらえというのが最近のカオルの本音だった。
 そうしてやはり今回も大スタ-様(自称)は大スターなりの事情というやつをふりかざした。
 曰く、この自分が結婚するのだから、発表はやはり大々的にしなければならない。大勢の記者を集めて、金屏風の前に二人で座って、婚約指輪を二人の手を並べて披露し、写真をたくさんとってもらうのだと。大スターならばそれくらいのことは義務だというのが大スター様(自称)の言い分であった。

 

 いったいいつの時代のどこの国のスターを参考にすればそんなものがでてくるのだ。
 くだらなすぎて笑う気にもなれない。
 だがしかし、金屏風を背負って笑顔を振りまく図というのが、この大スター様(自称)には妙に似合ってしまう。カオルもそれは認める。けっして賞賛が伴うものではないが、自分ならそうしなければならないという大スター様(自称)の主張もあながち間違ってはいないのだろうと思う。だが、それに付き合わされる方はたまったものではないだろう。そんな茶番はこいつ一人でやればいいのだ。
 そう思ったカオルはそのままそれを口にした。
「一人で? 結婚は二人でするのに一人じゃ格好がつかないじゃないか!」
 くだらない話につきあってやっているだけでも感謝して欲しいものだというのに、こちらの言い分に対して反論するなんてどういう了見だ。
 カオルはそう思ったのだが、元来口数の多い方ではないカオルの口の動きは、身体の他の部分に比べると非常に鈍重だ。カオルが本音をさらす前に、婚約破棄される寸前の大スター様(自称)は、べらべらと文句を言い続けた。
 カオルはいいかげん面倒になったので、いや最初から面倒だと思っていたのだがいいかげん忍耐の限界が来たので、しゃべり続けている相手をそのままにソファから立ち上がった。
「待てよ、まだ話は終わってないだろ」
 部屋に入ったときのように気づかずにいてくれればいいものを、今度は目ざとくカオルの動きに気づいた客は、カオルを引き留めにかかった。
 カオルは女性社員の前ではこらえた舌打ちを今度はためらわなかった。そうして短く言い捨てる。

 

「発表くらい一人でやれ」
「だから、結婚は……」
「結婚は二人ですればいい。発表だけなら一人でも出来るだろう」

 

 すると大スター様(自称)は、一瞬きょとんとして黙り込んのだが、すぐに破顔するとそうかと言った。
「そうか、そうだな。結婚式まで婚約者は秘密っていうのも、いいよな!」
 どうせ式の時にお披露目するんだしなと、途端に上機嫌になった大スター様(自称)を今度こそ置き去りにしてカオルは部屋を出た。
 自分の考えに夢中になったそいつは、もうカオルのことなどどうでもよくなっているので追ってきたりはしないと、それなりに長くなったつきあいの中でカオルはよく知っていた。

 

 その後、宣言通り金屏風を背負って一人笑顔を振りまく大スター様(自称)の姿を、カオルはテレビ画面で見ることになったのだが、破談になった方が相手のためだっただろうにと思ったことは、祝儀代わりに自分の胸に納めておくことにした。

 

008 金 

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 似たような話を前にも書きました。

 たぶんハワードは生涯に100回以上同じようなことをするのだろうなと思っています。

 カオル以外の人ももれなく被害にあっていると思われます。

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