ここもロクの小屋
失敗した
先月髪を切るときにばっさりショートにしておけばよかった。
毎年クーラーの冷えと戦っているので、うなじが隠れるくらいの長さにしておいたのですが、節電節電で28度の事務所は暑くてたまりません。
寒いよりはいいんだけど、髪の毛は邪魔なんだ。
また切りに行けばいいだけの話なんですけどね。なんかお金がもったいなくて。私ケチなので。
でも暑いわ。ボーナス出たら美容院に行こうかなあ。それともその予算を服買うのにまわそうかなあ。
その前にボーナス出るのかなあ。
今一気に涼しくなりました。
さて、お題6つめです。
覚悟していた以上に痛みは激しかった。
向こうにいるときは気にならなかったが、こちらへ戻ってみれば、とても満足できるような状態ではなかった。響きも艶もないかすれた音にメノリは驚き、落胆した。これでは音楽とは言えない。
だが、無理もないと思う。
厳しい直射日光、気温も湿度も高かった。終わってみれば短かったとはいえ、冬の寒さも辛かっただろう。潮風に砂嵐もくぐり抜けた。最初の墜落から重力嵐への突入まで、思えばずいぶんと振り回したものだ。
修繕が必要なのは当然だった。
むしろ修繕できる程度で済んだのが奇跡と言うべきなのだろう。
メノリのバイオリンはひどく傷ついていた。
しかし、新しいものを買ってやろうという父の申し出は断った。あの旅を共に耐え抜いた戦友を手放す気にはなれなかったのだ。
だが一方で修理に出すことをためらう気持ちもあった。コロニーの音楽を奏でるのにこのままでは至らないのはわかっていた。だが、修理するとなればずいぶんと大がかりなものになる。おそらく本体以外はすべて取り替えなければならないだろう。
そんなことをしてしまったら、傷以外のものも無くしてしまうのではないだろうか。
それでもメノリはそのバイオリンを直すことにした。自分の不安は何の根拠もないものだと、自分自身でばかばかしくなったということもある。それに、新しいバイオリンが手元に来たとして、それがとても良い品だったとして、自分はそれを奏でる気になるのだろうかと問うてみれば、答えは否だったからだ。
修理はやはり大がかりなものになった。部品を取り替えるのはもちろん、ニスも塗り直した。たかがニス一つ。しかしその一つで見た目はずいぶんと変わる。なじんだ指板もなくなり、当然弦も新しくなって戻ってきたそれは、まるで見知らぬ人のようによそよそしい顔をしていた。
それでも。
メノリは見違えるほどになった友達をそっと抱き上げた。大切に慎重に、もう髪の毛ほどの傷もつけないように。
呼吸を整えて構える。
弓を乗せて音を出す。
流れ出た響きにメノリは口元をほころばせた。
お前は、あの海と月を覚えているんだな。
これからはこのコロニーで、あの星の音楽を、かけがえのない友と奏でていけるのだとメノリは心から喜んだ。
006 音
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拍手でご指摘があったのですが、メノリのバイオリンはアダムが持ってます。
でももし持って帰ったらこんな感じかなあという気分で書いてしまいました。