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ここもロクの小屋

更新がない日のつぶやきとか備忘録
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57個目 

風邪でした

 

昨日は鼻がむずむずっていう感じだったのですが、朝起きたら完全に風邪の症状でした。のど痛いし、頭痛いし。
念のため耳鼻科にも行ったのですが、「これは風邪やね」ということでした。
花粉症じゃなくてよかったけど、季節の変わり目にしっかり風邪をひくなんて、私ってダメな子。

 

皆様はお気をつけくださいませ。

 

今日はハワメノ。


 

 ああ、いらいらする。
 メノリは手にしていた書類の束を机の上に投げ捨てた。常ならぬ乱暴な仕種で放り出された書類は、当然雑な音をたてて散らばる。自分がしたことの結果だというのに、メノリはそれにも苛立った。
 先ほどまで説得にかかっていた年配の議員のしたり顔が頭から離れない。
『口にするだけなら簡単だ』
『現実というものがわかっていない』
『時期尚早というものだよ、メノリくん』
 メノリの倍以上を生きているという経験を振りかざし、並べられたお説教は、しかし善意によるものではない。色々なことを言ってくれていたが、つまるところ根ざしているものは同じだ。
 所詮は女の子という、さげすみ。
 見くびられているのだ。ことさらに「メノリくん」などと、ファーストネームで呼んだりするのがその証拠だ。
 長い時間を費やしたが、こちらの要求を通すどころか、話を聞かせることすらできなかった。のらりくらりと意味のない言葉ばかり流れていっただけだ。
 電話の音が鳴った。メノリの机の電話ではなく、隣の部屋の秘書のところの電話が。ドア越しなのでさして大きな音ではないが、秘書が出るタイミングがいつもより遅かったので、その分いつもよりコール音が長かった。たったそれだけのことなのに、メノリの眉間にはしわが寄った。
 ああ、忌々しい。
 だが、と一方でメノリは思う。
 結局、ああした連中にいちいち苛立っている自分は、確かにまだ「所詮」で「女の子」なのだろう。未熟なのだ、自分は。心の底から腹立たしいほどに。
 こんな日はさっさと帰った方がいい。バイオリンを手にして、自分の思いだけに沈む時間を過ごすのがいい。
 しかし、メノリがしたのは帰る支度ではなく、別の所へ出かける支度だった。
 本当は別の議員を訪ねたかったのだが、アポイントがとれなかった。それに、もう誰かを訪ねるには遅い時間になっている。だから、もう家に帰ってしまってもいいのだが、メノリはそうしようとは思えなかった。今日は何の収穫もなかった。明日は実り多い日にしたい。そのために、少しでも何かをしておきたかった。
 秘書に車を準備するよう告げて、先に部屋を出る。車が来ていないことを承知で建物を出たのは、少しでも広いところの空気を吸いたかったからだ。
 大通りに背を向けて立っていると、近くに大きな車が止まった。
 邪魔だなとメノリの視線がその車に向いたのと、車のドアが開いたのはほぼ同時だった。
 そして空いたドアから伸びてきた腕が、メノリの腰をさらってメノリを車の中へ引きずり込んだのは、そのすぐ後のことだった。
 悲鳴を上げなかったのは、メノリが気丈な性格をしているからだ。
 だが、抵抗もしなかったのは、邪魔なくらい大きな車に見覚えがあり、さらには自分をさらった腕にも覚えがあったからだ。
 案の定、メノリが横になっても余裕がありそうな車内で、車内だというのにサングラスをしている男がその腕の持ち主だった。そいつは、サングラスを持ち上げて、グリーンの瞳をひらめかせると、ウインクを一つ投げて寄越した。
「どういうつもりだ、ハワード」
 宇宙一の大スターからのウインクだったが、それでメノリの機嫌が良くなるはずもなく、メノリは地の底から響きそうな声でハワードに詰め寄った。
「私は、これから行くところがあるんだ。さっさと下ろせ」
「だーいじょうぶ。ちゃんと秘書に話は通してあるよ」
 さてはさっきの電話がそうだったのか、とメノリはほぞをかむ。どうりでしゃくにさわると思ったと、メノリらしからぬ非論理的な考えまで浮かんだ。
「そういう問題ではない。私は仕事が残っているんだ」
「誰かと約束しているわけじゃないんだろう?」
 秘書から情報が漏れているらしい。いつの間にまるめこんだんだとめまいを覚えながら、メノリはもう一度そういう問題ではないと抗議をしようとしたが、ハワードの指が伸びてきてメノリの唇をそっとふさいだ。
「いいから、黙ってぼくにさらわれておけよ」
 そうして正面からメノリの瞳をのぞき込み、ハワードは悠然と微笑んだ。
「そんな顔をして取りかかったって、どうせろくな仕事になりやしないよ」
 そういう問題ではない。
 メノリはやはりそう言いたかったのだが、胸に浮かんだその言葉の調子がさっきよりずっと弱くなっていることを自覚して、頭を抱えたくなった。

 

057 誘拐

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私をどこかへさらって~ってある意味乙女の夢
メノリさんにはそういう願望なさそうだけどね。目の前の困難とは戦って戦って戦い抜くタイプ。

だから、ハワードのゆるさがちょうどいいのかもしれませんね

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