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ここもロクの小屋

更新がない日のつぶやきとか備忘録
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55個目 

55です。ゴーゴーです。ってラストワルツのときも言ったっけ?
私にとってゴーゴーといえば、ゴーゴーファイブですけども(見てませんが)。

 

今日はベルシャです。



 今日のベルはシャアラと食料集め係が当たった。
 例えばカオルと一緒だったなら集め方は狩りが中心になるが、シャアラと一緒のときは採取が主になる。
 果物を探して森に入ると、ちょうど食べ頃の実がなった木をみつけることができた。
「わあ、いい香り」
 シャアラがうっとりと目を閉じて大きく息を吸い込んだ。ベルも続いて吸い込むと、鼻から胸にかけてふんわりと甘さが広がった。
「これは、すぐに食べられそうだね」
「みんな喜ぶわね」
 二人で顔を合わせてにっこり笑う。早速採取にとりかかろうとして、ベルはふと首を巡らせた。
「どうしたの?」
「うん……、俺はちょっと、回りを見てくるよ」
 自分を見上げてくるシャアラが少し不安そうにも見えたので、ベルは安心させるようにいつもよりさらにゆったりと話した。
「今日はこの果物だけで充分だろうけど、他のものもあればもっといいし、少しだけ探してくる。すぐに戻るから、シャアラは先にこの果物を集めていてくれるかい?」
「わかったわ。気をつけてね」
 仕事が出来たことで気合いが入ったのか、思いの外しっかりとシャアラはうなずいた。
「シャアラも、気をつけて。何かあったらすぐに呼んでくれ」
 差し当たってこの周辺には危険なものがないことを確認し、ベルは茂みの奥へ足を踏み入れた。
 この辺りに、罠をしかけていたことを思い出したのだ。果物もいいが、やはり肉があった方がいい。トビハネあたりがかかっていれば申し分ない。
 別にシャアラと一緒に見に行ってもよかったのだ。というよりむしろその方がいい。この辺りはいえからも近く危険は少ないはずだが、それでも一人になるのは避けたほうがいい。一人にするのはよくない。
 けれど、罠に何かがかかっていたら、当然それを期待しているから確認にいくわけだが、それをシャアラに見せたくなかった。動物を殺して食べることを、シャアラも今では納得し、肉を口にもしているのだから、今さら取り乱したりはしないとわかっている。けれど、やはりその瞬間を目にすれば、優しいシャアラは心を痛めるのだろうと思うと、やはり連れて行こうとは思えなかった。
 シャアラが声を上げたらすぐに気がつけるように注意を残しながら、罠の所までたどり着いた。残念ながら、あるいは幸い、罠には何もかかっていなかった。作動した跡は残っていたのだが、かかった何かを捕まえることまではできなかったようだ。落胆と安堵の入り交じったため息を落とし、ベルは罠をかけなおした。
 急ぎ足で先ほどの場所まで戻ってくると、シャアラの声が耳に届いた。何かあったのかと一瞬身構えたが、その声が悲鳴ではなかったので、すぐに緊張をとく。走り出しそうになった歩調をゆるめて近づいていくと、シャアラが歌っているのだということに気づいた。

 

What are little girls made of?
 Sugar and spice,
 And everything nice,
 That's what little girls are made of
.」

 

 果物をもいで一カ所に集めながら、シャアラは弾んだ声を響かせている。
 その姿に知らず目を細めて、ベルは声をかけずに歌を聞いていた。
 この歌をベルは知らなかったが、一度聞けば一緒に口ずさめるような易しい旋律が、シャアラの歌い方によくあっていた。それともシャアラの歌い方がいいから、すぐに覚えられるような気がするのだろうか。
「いい歌だね」
 曲が一回りしたところを見計らって声をかけると、シャアラの肩が跳ね上がった。
「聞いてたの?」
 まん丸になった目の周りがみるみるうちに赤く染まっていく。小さくなったシャアラの様子に申し訳なくなって、ベルは頭をかいた。
「ごめん。驚かせるつもりじゃなかったんだけど」
「ううん、いいの。それよりわたしこそごめんなさい。気をつけるように言われたのに、夢中になってしまっていたわ」
「ああ、そうだね。今度は気をつけてね」
 謝られて初めて、確かにそうだと思い至り、ベルは苦笑しながらうなずいた。周囲に注意が向いていなかったのは自分もで、謝られる資格が本当はない。なんだかまた申し訳なくなった。
「さっきの歌……」
 改めて二人で果物をまとめながら、ベルは話題を戻した。
「女の子は砂糖とスパイスでできている、だっけ。かわいい歌だね」
「マザーグースよ」
「まざーぐーす?」
「地球時代の古い民謡なの。本で詩を読んで気に入って、歌も調べたの」
 そう説明されてもベルにはよくわからなかったが、話しているシャアラが楽しそうに笑うので、本当に好きなんだなということはわかった。
「他にたくさんあるのかい?」
「ええ、とっても」
 他の歌も聞いてみたいと思ったが、ベルはさっき気になったことを先に尋ねた。
「男の子は何でできているんだろう」
「え?」
「さっきの歌に、男の子のことは何もないの?」
「ううん。あるんだけど……」
 シャアラは眉を下げて言いよどんだ。作業の手も止まってしまう。
「あまり、いいものじゃないの」
「ふうん。どんな?」
 それでもシャアラは言いにくそうにしていたけれど、ベルが興味を持って待つ姿勢に入ってしまったので、ためらいがちにそっとその部分を歌ってくれた。

 

What are little boys made of?
 Snips and snails,
 And puppy dog tails,
 That's what little boys are made of.」

 

 確かに女の子のことを歌った部分とはずいぶん違う。
 ベルはぽかんと口を開けて、ついで吹き出した。
「ぼろきれや犬のしっぽかあ」
「おかしいでしょう?」
 シャアラは申し訳なさそうに縮こまってしまったが、ベルは笑いながらいいねと言った。
「面白いよ。確かにそんなものかもしれないなあ」
「そう、なの?」
 シャアラには何が面白いのかぴんとこなかったらしく、首をかしげているが、ベルは重ねてうなずいた。
「なんだか、わかるような気がするよ。男の子と女の子って違うよね」
 シャアラにはやはりわからないようでしばらく不思議そうにしていたが、ベルが笑っているので安心したのかこわばっていた体の力を抜いて、微笑んだ。
「ねえ、シャアラ。よかったらさっきの歌、歌ってくれないかな」
 荷物をまとめ終え、いえへと戻る道すがら。ベルはシャアラにそんなお願いをした。
 シャアラは恥ずかしそうに目を伏せて、すぐには歌ってくれなかった。
 けれど、二人ならんで歩き出すと、その口からベルの耳になじんだ旋律が流れ出した。
What are little boys made of? ――」
 小さなボールが弾んで転がるような歌を聞きながら、それを歌うシャアラの姿を見て、ベルは思った。
 やっぱり女の子は素敵なものでできているんだろうなと。

 

055 砂糖

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私にとってマザーグースといえば、「だ~れっがこっろしたクックロービン」ですけどね。

 

それはそれとして、このころのベルにとって「シャアラかわいい」は小動物に対するそれとたいして違わないと思います。が、そこかーらーの!ですよね!

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