ここもロクの小屋
無事でしたが
昨日は宝塚に行ってきました。台風の中。
電車が最寄り駅から乗れなかったくらいで、雨も風も移動中はたいしたことがなく、特に困ったりせずに行って帰ってこられたので、ニュースでの被害状況を聞くにつれ驚いています。
宝塚だったので問題なかったけど、別の場所への旅行とかだったら危なかったかも。
ちゃんと調べて安全って思ったから行ったというわけではないので、反省しています。
楽しみより安全を優先させないとダメですよね。
お題の方は32個目です。今回はヒカルの碁。
自分が好きでいると案外忘れてしまうものだが、世間の囲碁に対する関心はそう高くない。
日々の対局の結果やその棋譜などは、こちらから探そうとしなければまず目に入らない。今はネットがあるからそれでもすぐに見つかるけれど、昔は大変だったろうなと思う。新名人誕生とか、中学生プロ誕生とか、よほど大きな話題でなければニュースにはならない。だからその名前を姿を探すのは結構大変だ。
大変だけど苦にはならない。目に入らないのなら入るところまで、自分で探しに行く。それが楽しい。
でも、やっぱり、本当に時々なのだけれど。
新聞、雑誌、そしてごくまれにテレビでその姿が見られたら嬉しかった。名前だけでも、見られたらそれで充分嬉しかった。
「なんだこれ?」
新居に運び込んだあかりの荷物はそう多くはなかった。二人とも実家暮らしだったので、生活用品はだいたい新しく買いそろえたし、持ってきたのは衣服と身の回りの品くらいだ。ただその中に、やたら重い箱があった。腕を広げなくても抱えられるくらいの小さかったので、気軽に持ち上げようとしたら思いがけない手応えがあってヒカルは驚いた。
何が入っているのかと側面を見れば、見慣れたあかりの字で「ヒカル」とあり、ヒカルはますます首をかしげた。
「なあ、これ何が入ってるんだ?」
別の箱を開けて片付けを始めていたあかりに声をかけると、あかりはとことこと寄ってきてヒカルの手にしている箱をのぞき込んだ。そして自分の字を認めるとぱっと顔を赤らめた。
「あかり?」
ヒカルが促してもあかりは黙り込んで答えない。開けていいかと重ねて尋ねると、それでも一応小さくうなずいたので、ヒカルはとりあえずガムテープをはがした。
「なんだこれ?」
中味を確かめて、ヒカルは箱を持ったときの言葉を繰り返した。
中から出てきたのは何冊ものスクラップブックだった。ページをめくるとそこにあったのはヒカルも忘れていたようなヒカルの記録だった。たいていは囲碁の雑誌の記事だったが、一般の雑誌や新聞、中にはインターネットの記事をわざわざ印刷して切り抜いたものもある。他にはビデオテープなどもあり、これも再生してみればヒカルが映っているのだろう。
よくもまあこれだけと呆れるくらいの、それはたいそうな量だった。
それにヒカルを書かれた小ぶりの箱はよく見れば他にもあった。
「すごいな……」
それを見てわき上がってきたのは「呆れ」だけでは決してなかったのだが、他には言葉にしようがなく、ヒカルはそれだけをつぶやいた。
「どうしようかと迷ったんだけど、やっぱり残していけなくて……」
邪魔だろうとは思ったものの持ってきてしまったのだと、あかりは体を小さくして言い訳をした。
「いいけど、とりあえずこの部屋には置けないよなあ」
真っ赤になったあかりの顔を見ていたら、ヒカルは急に照れくさくなってきて、それをごまかすためにわざと大きな声を出した。この部屋――つまり今作業中のリビングには置けないと断った上で、肩をすくめて笑う。
「こんなの誰かに見られたら、どんだけ自分が好きなんだって思われ……」
「違うよ! 私がヒカルを好きなんだよ」
ヒカルの照れ隠しが終わる前に、あかりが身を乗り出してそんなことをしかも大声で言うので、ヒカルはとうとう耐えきれなくなり、とにもかくにもあかりの体を引き寄せてその口をふさぐことにした。
「……いいからそれは人目につかないところにしまってくれ」
「了解」という小さな声はヒカルの腕の中から聞こえてきた。
032 時々
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時々、たまに、ちょっとだけは私の中でひかりワードです。
今ならBDやDVDなんだろうけど、ヒカルの碁連載当時はまだビデオテープの方が主流だったかなと思い、ビデオに。あ、でも結婚するくらいの時期ならDVDでいいのか。
まあいいや。