忍者ブログ

ここもロクの小屋

更新がない日のつぶやきとか備忘録
HOME  >    >  [PR]  >  コネタ  >  74個目
[776]  [775]  [774]  [773]  [772]  [771]  [770]  [769]  [768]  [767]  [766

[PR] 

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

74個目 

乙女度強化月間なのです。
忘れてませんが、あと数日でどこまでできるか。
とりあえず、もうちょっと温かくなってほしいんですけど。寒いと動きがにぶくなるから。


 今月は16~17日と、25~26日。
 メールにそうあったので、ハワードはスケジュール表を開いて日程を確認し、うめいた。
 全然意味がないじゃないか。
 そんなふうに嘆くのも、もう何度目になるだろう。
 本当に全然意味がない。
 しばらく鬱々とした気分をもてあましていたハワードは、やがて決然と顔を上げた。
 もう我慢できない。

 

 メールを送る前にそのことは確認済みだったので、メノリはいつも通りに過ごしていた。即ち、嘆くことも苛立つこともなく通常通り仕事を進めていた。
 ところが、前触れもなくドアが開いたのでその仕事が滞ることになってしまった。
「そこで何をしている?」
 案内も受けずノックもせずに侵入してきた相手には、当然メノリの対応も礼を欠いたものになる。一瞬だけ流した視線を書類に戻し、仕事の手を休めずに短い言葉だけを投げた。
「メノリを見てる」
 返ってきた言葉も短かった。
 メノリはほんの少し眉を上げて、けれどそれ以上表情を変えずにそうかとまた短く言った。
 この部屋の調度はほとんど支給されたもので、メノリが設えたわけではない。やたら毛足の長い絨毯も最初にこの部屋に入ったときと同じものだ。無駄と思えるほど柔らかい絨毯なので、細くて高いヒールの靴で歩いても足音は気にならない。
 それなのに、その侵入者はハイヒール姿でもないのに、足音荒くさらに部屋の中深く入ってきた。その上、机の上に両手をついてどんと乱暴な音を立てた。
 さすがにうるさくなってメノリが顔をあげたのと、その乱暴者が声を荒げたのは同時だった。
「ぼくを見ろよ」
「仕事中だ」
 不機嫌そうに目を細めて、それでもメノリの仕事の手は止まった。椅子から立ち上がることはせずにその顔を見据える。
「お前も仕事だろう? 明日から撮影じゃなかったのか、ハワード?」
 メールを送る前に確認したスケジュールを思い起こしながら尋ねると、ハワードはどういうわけか胸を張ってうなずいた。
「そうだとも。明日から撮影だ。今日は空いてる。だからメノリに会いに来たんだ」
「撮影場所はフォボスじゃなかったのか? ここからだと――」
「もうすぐ出なくちゃ間に合わない」
 ハワードはメノリの言葉を引き継いだ。
「だから、その間くらいぼくにつきあってくれたっていいだろ」
「その間もなにも、本当にもう出なくては間に合わないぞ」
 メノリのつれない態度にハワードは顔をしかめたが、メノリが立ち上がったのを見てにやりと笑った。メノリが何のために立ち上がったのかすぐにわかったのだ。
「宙港まで送る」
 メノリが言ってくれたことが自分の予想通りだったので、ハワードは絨毯の上を弾むようにしかし音を立てずに歩いてメノリの後に続いた。

 

「いったい何を考えているんだ」
 ハワードの無茶な行動にメノリはおかんむりで、宙港までの車内ではなじみ深いお説教が始まった。しかしハワードは満足していたので、すねることなく笑って答えた。
「何って、メノリに会いたかったからさ」
 それに対してメノリが何かを言うよりも早く、ハワードは自分の言いたいことをつなげた。
「だって、全然会えないじゃないか。せっかく家を買ったのに、全然一緒に住んでない」
 結婚して、新居を構えて、けれど、二人はあまりに忙しすぎた。片や宇宙一の大スター、片や新進気鋭の連邦議員。仕事の内容は全く違うが、仕事の範囲が宇宙規模というところは同じで、やれ撮影だ、やれ視察だと、家を空ける時間が長すぎた。もちろん、家に帰る日が一日も無いわけじゃない。ただ、それが重なることが絶望的なまでに少ないというだけだ。
 そう、メノリにとっては「だけ」なのだが、ハワードにとってはそうではなかった。
「一緒に住めない家なんて意味がないだろ」
 だから一瞬でも会えるなら会いに来ると、何のてらいもなく断言するハワードに、メノリはため息をついた。
「意味はあるだろう」
「どうしてさ?」
「どこでどうしていても、帰る処は同じだ。私にとってそれは意味のあることだが、お前は違うのか?」
 問われてハワードは言葉に詰まった。そう言ったメノリの顔に浮かんでいたのが、いつもの厳しさだけではなかったので、どうしようかと少し迷ってしまったのだ。
 しかし、ハワードは結局自分のしたいようにした。即ち、メノリの体を引き寄せてその唇に口づけるということをごく自然にやってのけた。
「ごめん。確かに意味はあるよな」
 得意げに口の端を上げて、にやりと笑う。
「でもやっぱり、実際に会うのも大事だろ?」
 会わなくちゃキスもできないからなと浮かれるハワードに、メノリはまたため息をついたが、車内に怒鳴り声が響くことはなかった。

 

074 同居

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

同居しているシーンが入らなかった
このカップルはメノリさんの方がロマンチストだと思っておりますです

ハワードの方がリアリストで即物的

拍手

PR
≪ 75個目HOME73個目 ≫

COMMENT

Name
Title
Mail
URL
Message
Color
Pass   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
Secret  チェックすると管理人にのみ表示されます。

≪ 75個目HOME73個目 ≫

カレンダー

03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30

管理人のサイト

最新コメント

[06/30 ぴゅーぴる]
[02/21 さわら]
[08/30 ロク]
[08/27 shioko]
[02/24 東海]

最新TB

ブログ内検索

バーコード

アクセス解析

忍者アナライズ

Copyright © ここもロクの小屋 All Rights Reserved.
Photo by 戦場に猫  Template by katze
忍者ブログ [PR]