ここもロクの小屋
63個目
譲…くん……?
……………………
譲くん…っ 嘘だよ……こんなの…嘘だよ
起きてよ、ねえ! こんな…こんなのは嫌だよ!
譲くん……っ!!
目を開けたら暗かった。
状況が把握できなくて、望美は何度も瞬きを繰り返す。
息苦しくて、呼吸があらい。大きく胸を上下させて深呼吸を繰り返すうちに、自分が仰向けに寝転がっていることに気づいた。
そうして暗闇に慣れてきた目に映っているのが、見慣れた自分の部屋の天井だとわかったところで、望美はようやくゆったりとした息を吐いた。
寝返りをうち、隣にあるぬくもりにすりよる。
その体が温かいことに、心の底からほっとして涙が出そうになった。
あの時、自分を濡らした血は温かかったのに、抱きしめた体はどんどん冷えていった。それでも望美はどうすることも出来なくて、失ったものの大きさに望美の心も凍ってしまったのだった。
けれど今隣から聞こえてくる寝息は安らかなもので、望美は起こさなくて済んだことにもほっとした。
大丈夫。側にいる。
ずっと側にいてくれる。
一緒に幸せになろうと約束したのだ。
これから何度悪夢にうなされることがあっても、目が覚めればこのぬくもりが側にある。
だから、大丈夫。
絶対に大丈夫。
望美は譲の腕にすがりつくようにして目を閉じた。
ほどなく、望美の寝息が譲のものと重なって、静かな部屋にそっと溶けた。
064 息
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譲が起きるパターンも考えたんですけど、通常ルートの譲は、たなぼた成就なので、のんきに寝てるのもいいかなと
乙女度強化月間なのに、暗くてごめん望美ちゃん。でも幸せに暮らしてるはずだから