ここもロクの小屋
54個目
乙女度強化月間なのです。
だから、意味とかそういうのはいつにも増してないのです。
二人が仲良しだったらそれでいいじゃないってことで。
カオルなら気づいていると思うけど、とルナは前置きをして言った。
「ここって、監視カメラがたくさんあるの」
「テロでも警戒しているのか?」
案の定、驚きもせず返したカオルにルナは肩をすくめた。
「それもあるんだろうけど、一番警戒しているのは迷子よ」
「迷子?」
そこは意表を突かれたのか、カオルは軽く目を見張った。そんなカオルの表情が珍しくて、ルナはくすりと笑みをこぼした。
「そうなの。元々地球の研究所って小規模だったのを、研究が進むにつれどんどん拡張していったもんだから、造りがおかしいのよね。来たばかりの職員はたいてい迷っちゃうの」
「そうか?」
「カオルはどこでも大丈夫そうよね」
サヴァイヴで、一人でどこへでも出かけていっていたカオルのことをルナは思い浮かべた。夜の森でも、積もった雪の中でも、カオルは必ず戻ってきた。あのたった一日を除いては。
沈みかけた思いを振り払うように一度顔を振って、ルナはそれにと続けた。
「職員だけじゃなくて、観光客も増えてるでしょ? たまに、危ないところにまで入り込んじゃう人もいるし、危ない場所じゃなくてもあんまり人が行かないところで迷ってしまうと、何日も発見されないってことにもなりかねないから、そうした迷子対策として、カメラが多いのよ」
そうなのかとカオルの返事は気のないものだった。
どれだけたくさんのカメラがあったとしても、自分がお世話になることはありえないので、ありがたいとは思えないし、見られて困るとも思わない。
ただ一つ気になるとすれば。
「ここにもあるのか?」
「まさか」
ルナは笑って否定した。
「個人の部屋の中にまでつけたりしないわ。こんなところで迷子になる人はいないでしょう?」
「じゃあ、何も問題ないな」
そうしてカオルはルナを引き寄せると、その肌に唇を落とした。
054 危険
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どこに落としたかは好きに想像すればいいじゃない。
ということにしておいてください(脱兎)