ここもロクの小屋
拍手ありがとうございます
自分が楽しいから書いている小話ですが、やっぱり反応がいただけると嬉しく思います。
メッセージまでいただけた日には踊りたくなるくらいはしゃいでおります。
自分が楽しいだけじゃなくて、読んだ人も楽しくなれるものが書けるように精進いたします。
お返事はまた夜にでも。
お出かけ前にとりあえず25個目。
あっという間だった。
実のたくさんなった木を見つけるのも、その木に登って実を落とすのも、落とした実を集めるのも、そうして集めた実をひもでしばってまとめ上げるのも。
見ているだけで仕事はすっかり終わってしまった。せめて運ぶくらいはしようと、ルナは実をしばったひもに手をかけたが、いくらも持ち上げられないうちによろめいた。重かったのだ。
「これにしておけ」
短い言葉とともに差し出された荷を手にすると、それも重かったがなんとか持ち上がった。これならルナでも運べる。見ればさっきのものより、しばられた実の数がかなり少ない。実が多い方の荷はすでに仕事を終えたその手に握られていた。
ルナが荷を持ち上げたのを見て取ると無言できびすを返した背中を追って、ルナは歩き出した。帰るぞと視線で促されたので、戸惑いはない。
少し前を行く背中は細い。肩幅も腕の太さも、自分といくらも変わらないのではないかとルナは思う。いや、ひょっとしたら自分の方が大きいかもしれない。
年頃の少女として大いに悲しい結論に達しかけたルナは、深くため息をついた。男の子とは根本的に成長の仕方も体のつくりも違うのだということはわかっていても、気になるものは気になる。
ため息をこぼし終えたところで、ルナは顔を上げた。前を行く足音がやんだような気がしたのだ。
果たしてその人の足は止まっていた。しかも振り返ってルナを見ている。その目がすっと細くなった。
「重いのか?」
何か言った方がいいかなとルナは思ったが、相手の口が開く方が早かった。かけられた言葉にルナは慌てて首を振った。
「ううん。大丈夫よ」
「……そうか」
うなずいてはくれたものの、その目は細くすがめられたままで、ああ心配してくれてるんだと思ったルナは口元をほころばせた。
「本当に大丈夫。カオルが持っているのより、ずっと軽いわ」
そうして笑っておいてルナは考えた。本当に大丈夫なんだけど、カオルは納得しないかもしれない。大丈夫ならため息はなんだったんだと思うだろう。でも、考えていたことそのまま口に出すのはちょっと恥ずかしい。
恥ずかしくないように自分の心境を説明するにはなんと言おう?
数瞬考えたルナの結論は次のようなものだった。
「私も男の子だったらよかったのになあって思ったの」
するとカオルはひどく奇妙な顔になった。目をすがめたまま、眉間にはしわがよる。
「男の子だったら、もっと力も強くて、足も速くて、もっと役に立てたのになあって。そしたらカオルと一緒に走れたのにって思ったの」
カオルは奇妙な表情をほどかなかった。眉間のしわがますます深くなる。ルナの唐突な言葉に驚いているようにも、呆れているようにも、心配しているようにも見えた。しばらくして、カオルは先ほどのルナよりもずっと大きなため息をついた。
「男にもいろいろいる」
「え?」
ルナが首をかしげると、カオルは目を細めたままルナの顔を見た。
「ハワードのような男でもいいのか?」
思わずルナは言葉に詰まった。その脳裏に浮かぶのは、これまでのハワードの言動の数々。「ぱぁぱ~!!」というすっかり耳なじみになった悲鳴が頭の中で響いたところで、ルナはこらえきれず吹き出してしまった。
「あははは、でも、ハワード、意外と足は速いわよ?」
お腹をかかえて笑いながらそんなことを言ってみる。カオルも否定はしなかった。そうだなと短くつぶやいた表情はさっき少し柔らかくなっている。
ひとしきり大笑いをした後で、ルナは目尻に滲んだ涙をぬぐいながら言った。
「でも、そうね。カオルみたいな男の子じゃないと意味がないわね」
「なお悪い」
「え?」
カオルが返してくれた言葉は短く、声も低かったのでルナの耳には届かなかった。何を言ったのかと尋ね返しても、カオルはすぐには応えてくれなかった。それでも辛抱強くカオルの言葉を待っていると、カオルは大きく一つ首を振ってこう言った。
「そのままでいいだろう」
そうしてルナの顔を見ないままカオルはきびすを返した。
「帰るぞ」
「うん!」
今度はちゃんと音になって届いたその言葉に、ルナは明るくうなずいて後を追った。
025 男
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24個目とこの25個目で「サヴァイヴでラブを」という課題をこなしたわ!
とすがすがしく汗を拭いていた私。
あと、75個お題がありますので、また課題にはチャレンジしますです。はい。