ここもロクの小屋
76個目
年度末らしくなってきました。
31日土曜日に出勤して、1日の日曜日はお休み。で、2日~13日までずーっとお仕事です。
14日に宙組見に行く予定なんですけど、無謀かしらん。
乙女度強化月間はあと2日。
ソファの上に台本が投げ出されていたのを見つけて、メノリは目を細めた。
散らかすなと何度言っても改善される様子がない。
しかし、改善されないからといって放置することもできないので、メノリは拾い上げた台本を持ち主の所まで届けに行った。
「所かまわず物を放り出すなといつも言っているだろう」
台本の持ち主は金髪を揺らして振り返ると、ああとうなずいてそれを受け取った。そして受け取った台本をそのままゴミ箱へ放り投げた。
「これはもういらないんだ」
メノリは顔をしかめた。
いらないものを放り出していただらしなさにお説教を重ねるべきか、わざわざ持ってくれた人に対する感謝を省いた非礼をなじるべきか。
メノリとしては両方やっておきたかったのだが、その前に気になることがあった。投げ捨てられた台本の方へ視線を流す。
「面白そうだと言っていなかったか?」
先日持ち込まれた企画の内容を、興奮気味に語っていた姿がメノリの記憶に新しい。これはその企画についてのものだったはずだ。
しかし、返ってきたのはそっけない言葉だった。
「もう断った」
「なぜ?」
あんなに楽しそうにしていたのにと、メノリにしてみれば当然の疑問だったが、奇妙な答えが返ってきた。
「煙草を吸う役だったから」
「……いけないのか?」
珍しくメノリが少し言葉に詰まったのは、意味が飲み込めなかったからだ。確かに普段煙草を吸う奴ではないが、役として煙草を吸うことは以前にもあった。それなのに、どうして今さらそれが理由になるのだろう。それも、あんなに心惹かれていたはずの仕事を断る理由に。
メノリが首をかしげていると、急に手をとられた。とられた手の方へ顔を向けると、熱を帯びた瞳にぶつかった。
「いいわけないだろう。もうすぐ父親になるのに」
今度こそメノリは言葉を失った。
手をとられたまま呆然としていると、とられた手を強く握られた。その熱さに少し気持ちが戻り、メノリは大きく息を吐いた。
「なぜ?」
わかったのかと問いの終わりはかすれてしまったが、それでも届いたようだった。もうすぐ父親になるという男はにやりと笑ってメノリを引き寄せると、そのまま腕の中に閉じ込めた。
「わかるさ。ぼくはメノリの夫で、この子の父親なんだからな」
076 煙草
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で、ここで終わるし。
この時代の台本ってたぶん、ソファの上に投げ出せる形してないと思うけどな……。