星宿姫伝 菅沼理恵
『くろがねの初陣』『くろがねの封印』
新展開。でもあと1冊で終わるんだそうな。
主人公がやな方向に成長した。というよりまったく成長していないと言った方が正しいんだろうか……。
ロマンスはやっと始まりました。そういう展開で始めないとしょうがないのはわかるけど、初登場や1巻表紙でヒーローポジションはったわりにたいしておいしいところがなかった赤とか、一番甘酸っぱいエピソード積み上げたはずの青とか、まっさきに告白かました黄とか、一番スキンシップの多かったように思える黒とか、みんな不憫だな。あと心酔してるとか言われたわりにその後まったくからみのない隣国の王子とかな……。
逆ハーっぽい設定の割に、全然逆ハー的萌え要素のないお話だ。
でもようやく恋を始めた主人公はかわいらしかったし、お相手もかわいらしかったので、よしとしよう。後1冊しかないけども。
有閑探偵コラリーとフェリックスの冒険 橘香いくの
『影の姉妹』『緋色の檻(前)(後)』『盗まれた蜜月(前)(後)』
シリーズ最終巻まで。
完結しているシリーズは、一気読みができて楽しいですね。勢いつけすぎて、あちこち読み落としているのは確かだけど。
フェリックスのトラウマについては、コラリーのぶっとばしかたに驚かされました。あれはやけになったんだよねえ。でも言葉じゃどうにもならなかっただろうから、コラリーの行動力が全てを解決したって事でいいんでしょう。
完全に両思いになった二人のやりとりにかなりときめいたので、この後ハネムーン編があるってのがうれしいです。ここで完全に終わりだったら、かなり悔しかっただろうと思います。きっとラブラブな二人を自分で書いていたに違いない。
『ひとめあなたに…』 新井素子
昭和60年初版なんです。だから読み始めはきつかった。
なんでかっていうと、若いお嬢さんの一人称なんです。昭和60年の若いお嬢さんのノリについて行けなくて。お調子者の男の子を称して「C調」って言うんですよ。そんな言葉私だって使ったことない。それに相手を指す二人称が「お宅」なんですけど、それっていつごろまで使われてたんでしょ。そうした語彙もさることながら、とにかく完全口語一人称のはじけたノリに面食らいました。コバルト文庫など少女小説全盛期にはそうした文章ってあふれかえってましたけど、あのノリです。昔はそれなりに読んでたのに、今はきついなーって思いました。時代って残酷。
でも、とりあえず1章だけがんばったら、あとは一気でした。お嬢さんの一人称がずーっと続くわけではなかったので、それもよかったのかも。
あと1週間で地球に隕石が衝突し地球は粉々にくだけてしまう。それがわかったときの主人公と4人の女性の行動を描いたものです。衝突を避けるためにどうするかというSFではなく、もう変えられない終末の時にどんな感情と行動があふれでるかを追ったラブストーリー。タイトル通りです。
主人公と恋人のラストのやりとりもいいのですが、みんなが死ぬといって大騒ぎする中「しあわせ」だと言いきった真理という少女の話が一番胸に刺さりました。なんか他人事じゃなかった。
『螺旋階段のアリス』 加納朋子
脱サラして探偵事務所を開業したところに、助手になりたいと押し掛けてきた少女は、色々謎めいていて……。というお話で、探偵さんと女の子の事件簿が続いて、女の子についての謎も最後に解けてという構成。面白かったけど、とくにひっかかったところがないので、感想として書くことがありません。
『Q&A』 恩田陸
総合ショッピングセンターで起きたある事件。何かが起きて一斉に客が店から避難し、その騒動の中多数の死傷者がでた。ところが、何が起きてそんな事態になったのか、客は何故逃げたのかがわからない。警察の捜査結果は、「何も起こらなかった。何もなかった」というもので。
という状況と謎の提示とその答えが、すべて二人の人間の対話「Q&A」形式で進むという小説。今回の結末もやはり「閉じない」もので、謎の答えつまり何がどうして起こったのかというところは、曖昧なままなのですが、この作品ではその曖昧な終わりこそがふさわしいと思えました。
章ごとにQもAも語り手が変わるので、ショートショートの連作とも言える構成になっています。一つ一つの章にオチがついているし、驚きも仕込まれている。章によっては好みに合わないものもありましたが、全部を通して自分の隣にある恐怖を煽るような構成になっていて、面白かった。
それだけに、一番最後のQ&Aの組み合わせが、オカルトチックなものになっていたのがちょっと残念だったけど。実際どこかで起こりそうなことが並んでいるから怖かったのに、現実味が薄れた分かえって怖くなくなってしまった。あの組みあわせじゃないと、当日その女の子に何があったのかを語らせるのは無理なんだということはわかるけど、それならいっそそれすら謎のままでよかったんじゃないかと、それだけ不満が残りました。
竜の眠る海 金蓮花
『落花流水』
このシリーズはずーっと前に読んでいたことがあるのですが、ずっと忘れてました。読むものがなくて本棚あさってなんとなく取り出したらシリーズの番外編でした。番外編なので今までの話を覚えてなくても読めて助かった。
『いちばん初めにあった海』 加納朋子
ねえ――。
いっとう初めにふってきた、雨の話をしようか。
それとも、いちばん最初に地球にあった、
海の、話を……。
この書き出しにぐっと胸を掴まれました。「いっとう」という語がいいなあ。加納さんの本は、いつもどこかに心惹かれる語句や文があります。
この本には二つの独立した話が収録されていて、まったく別の話として読むこともできるのですが、共通する登場人物がいて、二つで本当に完成するという構成になっています。
どちらも主人公の現状が小出しになるほど謎が出てきてさらにそれがほどけていく過程すべてに、穏やかな波のようなゆるりとした流れを感じられる素敵な話。YUKIのように友情をつかえるといいなあという憧れも持ちました。つかうというのは変かもしれないけど、単に友達を大事と思うだけじゃなくて、どう大事にするかという手段もね、友情の重要な要素だと思うのです。
『私の男』 桜庭一樹
なんかの賞をとった話じゃなかったっけ? と借りてから思ったのですが、思い違いかもしれません。
語り手が章ごとに変わり、章が進むごとに過去に遡っていくという構成。
主人公と父親を結ぶのは愛情ではないと言うのは哀しいし、愛情だけだと言いきればもっと哀しくなるように思いました。最後の章は主人公と父親が出会った頃の話になるのですが、最後の一文は、その後の二人を知っているので、とても複雑な気分になります。
『世界に中心で、愛を叫ぶ』 片山恭一
今頃読んだぜこのベストセラー。
田舎の図書館はベストセラーをベストセラーのタイミングで入れてくれるとは限らないし、入ったとしてもいつも貸出中で読めなかったりするので、ベストセラーとなった本はだいたいこんなふうに今さらなタイミングで読むことになる。
身近な知人が私より先に読んで、「なんでこれがベストセラーなのか全然わからなかった。つまらない。これで号泣できる人がいるなんて信じられない」とかなんとか、こき下ろしていたので、どこがどうつまらないのか確かめるつもりで読んだけど、全然つまらないとは思わなかった。
確かに盛り上がりには欠けるので、号泣を誘われるような内容ではないと思う。タイトルは随分情熱的だけど、中味は淡々とした語り口なので、そういう意味では拍子抜け。これで号泣する人は、多分、映画の方のイメージをひっぱるからじゃないのかと。小説は過去を思い出すという視点なので、感情もまた今現在の生の痛みは描かれない。でも映画なら、どの感情も現在進行形で目の前に展開するので、号泣ということになるんじゃないかと。映画見てないので、断言は出来ませんが。
ともあれ、号泣を誘わずとも、やっぱりこれはいい小説だと思いました。人間誰しも過去に痛い思いの一つや二つ抱えているものだと思うし、その痛みを取りだして眺めたときのやるせなさや、痛みが痛みではなくなっていく安堵ともどかしさを、共有してほっとするそういう話でした。
これをつまらないと言いきったかの知人は、おそらく過去の痛みとの向き合い方が、私やこの本とは違うのでしょう。
ただ、なんでこれがベストセラーかわからないというのは同感かも。なんでこれがというよりも、なんでこれだけが? かなあ。この本がベストセラーに値しないとは思わないけど、この手の本は他にもあるだろうにと、それは思う。やっぱりベストセラーってのは、本そのものの価値だけじゃなくて、他の要素やタイミングが色々重ならないと生まれないものなんでしょうね。
京&一平シリーズ 神谷悠
『赤迷宮・虹迷宮』
これは漫画。妹が買いそろえているシリーズなんですが、私も好きで読ませてもらっています。
説教くさいといえば説教くさいテーマが多いのですが、でもまっすぐな正義感や愛情ってやっぱり見ていて気持ちがいいので、好きです。
やっぱり大好きって、思ってるならどんどん言った方がいいですよね。
1週間で15冊か。これでも自重したんですよ。
今図書館は蔵書整理期間前なので、お一人様何冊でも借りてOKな時期なんです。借りたら借りただけ読んじゃう私には非常に危険な期間です。いつも山ほど持ち帰りそうになって、なんとか数を減らしています。
今はまだ整理期間まで間があるのでいいのですが、実際に整理期間に突入したら、借りた本一気に読んで、読む本がなくなってしまって、でも図書館は休みだから補給できなくなって、それでイライライライラしている自分が目に浮かぶなあもう。