ここもロクの小屋
心霊探偵八雲5 神永学
生まれつき死者の魂が見える左目をもつ八雲と、友人の遭遇した心霊現象をきっかけに彼と知り合った晴香ちゃんとのお話。
と言ったら語弊があるのかどうか、タイトル通り探偵小説で毎回事件を解決しています。
幽霊が見えることがもちろん事件解決の重要な手がかりになるわけですが、幽霊が見えるんだからなんでもありということはなく、荒唐無稽なファンタジーじゃなくて現実味のあるミステリーにしているさじ加減はうまいと思います。
ただ私などは謎よりも、八雲と晴香を初めとする登場人物の成長とか絆の形成を楽しみにしているので、そんな評価はあてにならないかも。
キャラクターの心情を丁寧に詳細に描写している文体は、余韻や風情がないと嫌うか、わかりやすいととるか、人によって好みがわかれそうな気がします。
以下5巻の内容ネタバレ
今回は1巻から小出しにされていた、八雲の出生の謎が明かされました。
母親に殺されかけたという傷を克服し、八雲が前に進むための重要な巻。
母親と、母と結婚して父親になってくれるはずだった人。二人の結末は悲しいものでしたが、八雲の心は晴香ちゃんの存在のおかげで優しいところに着地できたなと、とりあえずハッピーエンド。
次巻より新展開、らしい。
ヒロインが活躍するという意味で、非常に嬉しい巻だったのですが、個人的に一つがっかりだったのが、晴香と八雲に生まれる前から縁があったという設定。
母親同士が知り合いだったということで、よくある実は幼なじみでしたとかいうものじゃないんですが、私はこういう展開はあまり好きではないのでがっかりでした。
実は昔からの知り合いでした、というパターンを使うなら、最初の出会いから伏線はっておいてくれないと、後付みたいにどうしても思えて好きじゃないんです。
二人が出会ったのは運命なんだ
という論理が好きになれない。縁もゆかりもなかった二人が出会って、そこから思いも絆も作っていくというんじゃ駄目だったのかしら。
わざわざお腹の中にいたころに出会ってましたという設定をつけて、それで八雲と晴香の関係にどういう色をつけるのか今ひとつしっくりきませんでした。
晴香ちゃんが運命だと盛り上がるほど、私は盛り下がってしまいました。
うーん。昔からの知り合いでしたということで、より盛り上がる関係ならいいけど(丘の上の王子様とか、って古いか)、この二人には不要な気が。そんなものなくても仲良くなっていって欲しかったなあ。まあ私一人の個人的な趣味からの感想ですが。
6巻以降、その設定も活かされて、より盛り上がってくれるならそれでいいですしね。