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そうだったらいいのにな(サヴァイヴ) 

 13話の感想を書いていたはずなのに、こんなものができあがってしまいました。

 でもこれは、ボツ小話というより、使えないとわかっているけどつい書いちゃった小話です。いつもの捏造小話ではなく、改竄小話なんです。
 改竄はいけないって、この前字書きさんバトンで言ったばかりなのに、まったくしょうがない人ですよ私は。
 13話がこういう流れだったらよかったのにという、願望をつめこんでみました。
 本編のアニメとどこが違うかよかったら比べてみて下さい。

 

 なんで、この流れがよかったのかについては、13話感想にて語りたいと思います。
 まだ全然書き上がっていないんですけどね(こんな改竄小話かいているからだよ)


 

「果物一つ落ちてないんだぜ」

 

 ハワードがうんざりだと声をあげ、他の者も皆力のない顔でうつむいた。
 今日は誰も収穫がなかった。お腹がすいた、今までの場所はもう取り尽くしてしまったのだろうかと口々に言葉を交わす中、それまで黙っていたベルがいえの外へと視線をやりながら口を開いた。
「カオルは、どうしたんだろう」
「そういやまだ帰ってきてへんな」
 きょろきょろと辺りを見回しながらチャコがそう言うと、続いてシンゴも不安げに眉をよせた。
「今日はちょっと遅いよね。何かあったのかな」
「いつものことだろ。あいつが勝手なことしてるのはさ」
 ハワードはひらひらと手を振りながらベル達の心配をあっさり笑い飛ばしたが、厳しい表情を崩さなかったのはメノリだった。
「それはそうだが、このままというわけにもいかないだろうな」
「メノリ?」
 メノリの硬い口調にルナが怪訝そうな視線を向けた。続いてルナはその意味を尋ねようとしたのだが、そこへはしごを上る足音がしてカオルが姿を見せた。
「あ、カオル。おかえり」
「おかえりなさい。遅かったのね」
 カオルは迎えてくれた仲間の誰にもただいまを言うことなく、抱えていた荷物をテーブルの上に降ろした。
「果物だ!」
 お腹がすいたとぼやいていたシンゴが、それを見て真っ先に明るい声を上げた。これで夕飯抜きはまぬがれたと皆の表情も一様にゆるむ。
 しかしそこへメノリの厳しい声がとんだ。
「ありがたいが果物調達は私たちが任されていたはずだ。一人で、どこへ行っていたんだ?」
「そうよ、みんな心配したのよ」
 シャアラも続けてそう言ったのだが、カオルは二人のどちらにも返事をしなかった。
「お前の腕は認めるが、どこへ行ったのか、いつ帰ってくるのかもわからないようでは、皆の結束が乱れる。単独行動は評価できないぞ」
 メノリは言葉を重ねたがそれでもカオルは答えない。メノリはいらただしげに眉をよせると一度言葉を向ける先を変えた。
「ルナ、どうするつもりだ」
「まあまあ」
 メノリの鋭い叱責と詰問を、ルナはいったん受け止めた。このまま続けたところでカオルがうなずくとは思えないし、何よりこんなに暗くなるまでがんばってくれたカオルを今責めたてる気にはなれない。
「無事に帰ってきたんだからいいじゃない」
 そうしてルナはカオルに笑顔を向けた。
「ありがとう、カオル。みんなお腹がすいているからいただくわね」
 カオルはメノリの追求に対してもそうだったように、ルナの謝辞にも表情を変えなかった。そんなカオルをルナは気遣わしげにみつめたが、周りの関心はカオルよりも彼が持ち帰った果物に向いた。
「どこでみつけてきたの?」
「食料図に追加しようよ」
 今までの食料図はあてにならないという話をしていたのはついさっきのことだ。新しい収穫場が見つかったのなら助かったと皆盛り上がったが、カオルの答えはつれないものだった。
「もうない。行っても無駄だ」
 弾んでいた雰囲気が一気に沈む。
「本当にないの?」
 あきらめきれないシンゴが重ねて問うたがカオルの答えは変わらなかった。
「独り占めするつもりじゃないだろうな」
 取り付く島もないカオルの態度にハワードが声を荒げた。そのままつかみかかっていきそうな勢いにルナはたまらず声を上げた。
「もうやめて!」
 ルナの大声に険悪になりかけた雰囲気は壊れた。しかしそれ以外の気もぬけてしまったのか、誰の口からもとっさに言葉がでてこない。
「とにかく!」
 数瞬流れた白けた空気を取り繕うように、メノリがやや大きな声を上げた。
「今までとは違う場所を探したほうがいいとわかった」
「そうね」
 メノリのまとめにルナもうなずく。とにかく明日からがんばろうと、とりあえずその場は収まった。

 

 次の日さっそく、今までとは違う場所での食料探しのために、それぞれの担当を決めた。今までと違う場所を探すということはそれだけ危険を伴うということだ。危ないことはしないようにと、メノリは仲間全員に念を押した。
 魚係となったのはカオルとシャアラだった。カオルのしかけにかかった魚を回収するという比較的安全な仕事だ。仲間内で唯一、知れた場所に行くことになった二人だが、メノリは慎重な姿勢をくずさなかった。
「あの場所は川沿いとはいえ森が近い。危険な動物が出るかもしれないから、充分注意してくれ」
「わかったわ」
 答えたシャアラに、メノリもうなずいて応じる。そしてメノリは続けてカオルにも声をかけた。
「カオル、聞いているのか? 注意が必要なのはシャアラだけではないぞ」
「……行くぞ」
 カオルは口を開いたが、出てきた言葉はメノリではなくシャアラに向けたものだった。そのままカオルはやりを手に森へ向かって歩き出した。
「カオ――」
 言い募ろうとしたメノリの肩にルナが手を置いた。言葉を飲み込んで振り返ったメノリにルナはにっこりと笑って見せると、そのまま魚係の二人にも笑顔を向けて手を振った。
「いってらっしゃい。二人とも気をつけてね」
 それまでカオルの背中とメノリの顔を交互に見やって立ち往生していたシャアラも、ルナの言葉にほっと表情をゆるませた。そしてルナに手を振るとカオルの背を追って駆けだした。
「ルナ」
 メノリは不満げにルナをにらんだが、ルナは屈託無く応じた。
「カオルのことだから大丈夫よ、きっと」
 
 しかし、大漁の魚を持って戻ってきたのはシャアラ一人だった。
「カオルはどうしたの?」
 ルナが尋ねると、シャアラは首を傾げた。
「心配するなって森へ入っていってしまったの」
 その答えにメノリが眉をつり上げた。
「シャアラを一人にしてか? 無責任にも程がある」
「きっとカオルにも考えがあったのよ」
 ルナのとりなしに、メノリはうなずかなかった。あれほど気をつけろとくり返していただけに、それでも単独行動に出たカオルのことがよほど腹に据えかねたのだろう。見事に積み上げられた今日の収穫にも、メノリの苛立ちは収まる様子を見せない。
 結局カオルが戻ってきたのは、食事の用意が全て済んでからだった。
「どこへ行っていた!」
 早々にメノリの厳しい声が飛ぶ。それに対するカオルの反応が見える前に、ルナはカオルにそっと声をかけた。
「みんなが心配するから、単独行動はやめてね」
「昼過ぎまで魚が捕れなかったから、万一に備えて行ったまでだ」
 カオルはルナに答えて自分の行動を説明したが、それはメノリを納得させることは出来なかった。
「シャアラを置き去りにしておいて言い訳するつもりか!? 何の為に二人で行かせたと思っているんだ。何かあってからでは遅いんだぞ!」
 メノリの口調は激しかったが、カオルは今度は口を開かなかった。ほんの一瞬メノリへと視線を流しただけで、沈黙を決め込む。
「……いいじゃない、メノリ。わたしは、何ともなかったんだし」
「今日は無事だったというだけだ!」
 メノリの剣幕に驚いたのだろう。シャアラがおずおずと口をはさんだのだが、メノリの厳しい口調は変わらなかった。そうして肩をいからせたまま、メノリはさらにカオルに向かってまくしたてた。
「カオル、お前のことにしてもそうだ。今までは一人で行動しても無事に戻ってきたが、明日も無事だという保証はない。いつまでも勝手が通ると思っているなら大間違いだ!」
「メノリ、言いたいことはわかるけど、少し言いすぎだよ」
 止まらないメノリを、穏やかな声が押しとどめた。カオルをその大きな背でかばうようにして、メノリとカオルの間に入ったのはベルだった。ベルはメノリがいったん言葉を止めたのを見て取ると、首を回してカオルを見下ろした。
「カオル、メノリも心配しているだけなんだよ。カオルがいつも一人で頑張りすぎているから、みんな心配しているんだ」
「そうそう、そんな一人できばることないで。見てみい。今日は大収穫やでぇ」
 チャコが胸をはると、スプーンとお椀を手にしたシンゴが、そわそわと足踏みをしながらたまらないと口を開いた。
「とにかく、早くご飯にしようよ。カオルだってお腹すいてるんでしょ」
 そういえば夕飯はとうに出来上がっていたのだった。
 話をするにしても食事を済ませてからにしようかと、メノリですら肩の力を抜いてシチューに向き直ったのだが、カオルは一人きびすを返した。
「オレはいらない」

 

 

 ――何がなんだかわからないと思いますが、私は13話がせめてこんな風だったら、今の13話よりずっと好きになれたのになあと思っているのです

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