ここもロクの小屋
相棒 花組 シアタードラマシティ
宝塚の相棒を見てきました。
相棒が宝塚になってる!
の一言が全て。そんな感じでした。
いやー改めて宝塚歌劇のふところって広くて深いと思いました。今までにも色々な題材をヅカ色で染めてきた宝塚なので当たり前なのかもしれないけれど、相棒でもそれができるんだなと感服。
ドラマのまんまではないんだけど、こんなの相棒じゃないとも思わない。杉下右京が歌って踊っていることに違和感を覚えないことに驚いてみたり。いやーすごいぞタカラジェンヌ。米沢さんとか伊丹さんとかもちゃんと出てます。姿勢とかに雰囲気出てます。だけどやっぱりヅカ風味にスタイリッシュ。
古典も文学作品も漫画もゲームもドラマもどんなものでも宝塚歌劇にしてしまえる力業はやっぱりお見事。それでいて原作ぶちこわしとはならない絶妙なさじかげん。もうすぐ100周年は伊達じゃないなと思いました。
で、肝心の作品の中身ですが。
扱った事件の内容・テーマは相棒らしかったかなと思います。社会派だったりヒューマニズムだったり愛憎がねじれてたり、もりだくさん。
歌やダンスも楽しいです。OPの右京さんが踊るところかっこよかったー。神戸くんも角田課長も踊ります。小野田官房長も歌いますよ! テレビではあまり出てこない婦警さんのダンスもコミカルで舞台を盛り上げます。
個々の場面の演出も凝っていました。映像使ったりとか。ただモニターはちょっと小さすぎて、イマイチでしたね。
ヒロインの説明をする場面で、ヒロインの旦那とその愛人のやりとりに、婦警さんの噂を同時進行で見せるところはうまいなーと思いました。人物関係と設定がするりと入ってくるし。あとは夫を浴室に閉じ込めたヒロインが十人のインディアンを歌うとこが印象的でした。かなりシュール。
そして何より、それぞれの登場人物の個性がしっかりアピールされてたのは好印象。
でも、正直、詰め込みすぎてバランスが悪く、一貫性がないという印象。
やりたいことが多すぎてとにかく全部やってみた、みたいな。
漫画スクールなら、書きたいことを整理してエピソードを削って見せる順番もよく考えましょうって絶対注意されるレベル。
一個一個の場面は見所があるんだけど、通して見るとぐだぐだ。
例えば同じ盛りだくさんでも、太王四神記なら、一本のジェットコースターに乗せられてるようなもので、次々場面が変わってもそれがきれいにつながっているからついていけました。見ている方のテンションが途切れないように作ってあったと思います。
でも今回の相棒は見せられるもの見せられるものが唐突なんですよねえ。
サービスシーンなんだってわかるけど、でもいらんのちゃうかなあっていうところが多かった。取調室のマジックミラーのシーンなんて完全にいらんと思う。だいたい取調室あのときしか使ってないやん!
婦警さんも使いすぎじゃないかなあ。婦警さんのおかげで事件が解決するならともかく、完全に賑やかしでしかないのに、そのせいで肝心の右京さんと神戸くんの出番少なくなってませんかね? まだ二人が「相棒」になりきってない時期の話ということを差し引いても、もうちょっと二人で魅せるシーンが欲しかった。
肝心の事件についても流れが悪すぎる。目の前の犯人は逮捕できても、背後関係までは洗えないっていうのは確かに相棒ではよくあるパターンだけど、でも、伏線はもう少しスムーズにはれないものなのか……。調律師が夫の愛人で実は○○ってのも無理がありすぎる。複雑な事件じゃないから、わからなかったとは言わないけど、でもぐっだぐだ。サスペンス・推理もの・事件ものとしては完全に失敗してます。
宝塚でも相棒はできちゃうぞっていうアピールは完全に成功してましたけど、でもそれだけかなあ。ジェンヌさんたちが作り上げた雰囲気は完璧なので、それだけと言い切ってしまうのはもったいないんですけどね。これだけ文句並べておいてなんですが、行って良かったなと思っています。
だってね、とにかく各キャラがすっごく魅力的なの。そこはすごい。真飛さんの右京さんにも惚れました。あのお方はほんとに器用ですね。壮さんの神戸くんも非常にかっこいいし。他の皆様も文句なしにチャーミング。花組の皆様、お芝居上手! 拍手!
それに、各場面を切り取って見るなら、ほんと楽しくて見所もあったんですよねえ。個々のシーンの演出はねえ、よかったんだけどねえ。一本としてみたときの流れとバランスがねえ……。もう事件のことは一切気にせずに、宝塚で再現された相棒の世界を楽しむことだけに集中すべき舞台なのかもしれませんねえ。そういう意味では完璧な作品だと思います。
脚本と演出を練り直して、再チャレンジ希望。
そんな今年最初の観劇なのでありました。