ここもロクの小屋
ミュージカルAIDA
見に行ったのはずいぶん前ですが、DVDも出ることだし、一応感想メモ。
安蘭さんは充分に堪能できました。
宝塚時代より、さらに可憐で愛にひたむきで、気高い王女でした。
ラダメス役伊礼さんは、さっそうとした青年将軍を好演。アイーダを愛しているということが強く伝わってきました。
アムネリス役ANZAさんはかわいかった! とにかくかわいかった。
宝塚版のアムネリス様は自分が王女なのだから皆が従うのは当然逆らうものは許さないという強く迫力満点でまさにアムネリス「様」でしたが、ANZAアムネリスは皆が従うのは当然だと意識したことすらない王女様でした。世界が思い通りになるのが当たり前すぎて、自分の思い通りにならないなんて想像もしない世間知らずの天然お嬢様。それがだんだん、世界は自分の思いだけで動いているわけじゃないということを思い知らされていって、最後は毅然とした女王になるという、その変化がよかったですね。
他の役者さん達も熱意にあふれていて、宝塚より舞台は狭く演者の人数もぐっと少なくなっているのですが、迫力は少しも損なわれていませんでした。って、宝塚版は映像でしか見たことないので比べられないんですけど、物足りないとは全然思いませんでした。
DVDはどうしようかなあ。
役者さんたちはみなさん素晴らしく、文句のつけようがないのですが、正直なところ脚本と演出には不満が残ります。
アイーダを主役に、テーマも「反戦」より「愛」に重点を置いて作り替えるというふれこみだったので、もっと大胆に変わってるのかな―と思ってたのですが、ほとんど宝塚版と変わってなかったのには拍子抜け。
変えられたところって、人数少ないし舞台狭いから変えざるを得なかったところと、男の人出てるから変えてみたところがほとんどなような。
違うテーマだから変えなくちゃいけなかったところ、宝塚という制約を離れたからこそ変えられるところというのが、もっとあったんじゃないかと思うんですが。
特にラダメスの扱いが。
トップスターの演じる役だから、湖月わたるがやる役だから、「こうなっていた」ところを、宝塚じゃなくなったから「こうした」っていう改変が一番必要だったんじゃないかと思いますが。
宝塚というファンタジーの中で「反戦」というある意味絶対正義なテーマを扱っていたからこそ、エジプトの将軍がいきなりエチオピアの解放を言い出したり、アイーダの愛のために国を捨てる決心をしたり、国王暗殺で裏切り者の名乗りを自ら上げたりしても、違和感がないわけですが、生身の男がやるにはちょっとどうなの?って思うんですけど。
流れはそのままにしても、ラダメスの心理をもっとわかりやすく描いてほしい。
登場シーンで「エジプトは領地を広げている」と、その「将軍は私だ」なんて雄々しく歌ってる人が、すでにエチオピアの解放を胸に秘めてるなんて見てる方はわかりませんよ。
あの歌はむしろカットしてもよかったんじゃないのか。トップスター登場を華々しく飾るためだけのシーンだろうに。あれカットして、アイーダとラダメスの出会いを放り込んで、ラダメスが戦いに「誇り」以外を感じるようになったきっかけを入れてくれた方がうれしかった。「愛」がメインテーマなら、二人の愛の軌跡をもっと丁寧に描いてほしかったと心から思います。
宝塚版とは全然違う作品になっていることを期待して見に行ったのですが、そういう意味では期待はずれでした。確かにテーマが変わっていることは伝わってきたんだけど、なんか中途半端だった。
安蘭さんを見たいという期待は満たされたのだけど。
DVDを買って、じっくり見直せば、もっとちゃんとテーマを読み取ることができるのかなあとも思うので、購入を迷っています。