ここもロクの小屋
カサブランカ 09年宙組
行ってきました、宝塚。
男がピカピカの気障でいられたカサブランカ。君の瞳に乾杯。
良かったです。この舞台から宙組トップを務める大空祐飛さんがさすがでした。
恋に破れて傷ついたやさぐれ具合も、初めての本気の恋に浮き浮きしているところも、傷から立ち直って新たな生き方を決めるところも素敵でした。
見る前は映画のミュージカル化ということで、場面の切り替えが難しいんじゃないかなーと思ってました。映像だと視点も場所もころころ変えられますけど、舞台だとセットを組み替えなきゃいけないから、大変だろうなって。いちいち暗転してたらテンポ悪くなるし、だれるし、どうだろと心配していたのですが、そこはさすがに宝塚大劇場でした。ひろーい舞台を存分に使って、暗転なしでセットをころころ切り替えてました。
宝塚見に行く楽しみの一つにこれがあるんですよ~。地元の市民会館じゃ絶対見られない大がかりな舞台装置。それが効果的に使われていると、遠くまで来た甲斐があったなって思えます。
それ以外にも見所はいろいろありました。
登場人物が主人公以外にも魅力的なのは、さすがに映画原作というのもあるのでしょうが、役者さんたちがしっかり個性的に演じてらっしゃった成果ですよね。主人公リックの経営するカフェの従業員なんて、ほんの端役ですけど、でも彼らが生き生きしているので、主人公もより魅力的に見えます。
素敵な舞台でした。
ちょっと残念だなと思ったところ
二人の出会いをもっと盛り上げてくれても良かったかな~。
せっかくの「君の瞳に乾杯」シーンなのに、さらっと流れたような印象でした。ヒロインはそれどころじゃなかった場面なのかもしれませんが、リックにとっては衝撃的な一目惚れ。「ガツン」とくる演出が欲しかったような。
トライアングルの一角、ラズロさんが終始淡泊に見えてしまいました。
燃える理想家、ナチスと戦う熱い男のはずなんですが、大人すぎるのか、おとなしかったですね。
我々は生きてる~って歌うとことか、盛り上がってるんだけど、でもなんか全編通すとおとなしかったような印象が残りました。ヒロインに愛された理由、リックが彼女を渡してもいいと思った理由が、迫ってこなかったように思います。
単にいい男ってだけなら、リックが彼女の手を離さなくてもいいんだし。
「彼を支えているのはお前(ヒロイン)だ」ってことが切実にわかるシーンがほしかった。
まあ、リックが彼女を行かせたのは、「彼を支える」ことが彼女を支えてるとわかったからっていうのもあるんだろうけど、三角関係のラブストーリーなので、ラズロももっと愛に苦しんでもいいんじゃないかと思いました。
そしてヒロイン。
リックに対する「愛してる」とラズロに対する「愛してる」の違いがわからない……。
今回がトップ就任初公演ってことを思うと、最初から難しい役にあたって、すごくがんばってるんだろうなというのはわかるし、充分魅力的なヒロインになっているんだけど、でも、その「愛」の違いをはっきり出してくれないとこの作品はしまらないよなあと、もっとがんばれと思ってしまいます。
まだ初日から1週間しか経ってないので、これからそのへんもどんどんよくなっていくんだろうなと期待をこめて、物足りないぞと言っておこうと思います。