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『号泣する準備はできていた』 江國香織 

 ここのところ読んだ本リスト
 書いておかないと、あの本よかったからまた読みたいとか、同じ作者のものが読みたいと思っても、タイトルや作者名を思い出せなかったりするんですよ……。
 忘れっぽくていけません。身を入れて読んでいない証拠かもしれませんね。

 


 

『号泣する準備はできていた』

『薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木』 江國香織

 私もこういう本が読めるようになったのか、と思った。
 昔はストーリィが本の主題になるものしか読めなかった。
「桃太郎がお伴を連れて鬼退治に行った」とか
「お金持ちの少女が父の急死によって色々苦労するが最後は父の縁者に助けられてハッピーエンド」とか
 あらすじを紹介すればそれでどんな本かわかるような、出来事の展開と帰結を追っていくという読み方ができる本じゃないと、おもしろいとは思えなかった。
 けれどこの二冊の本は、例えば「専業主婦がデパートに買い物に行ってランチでちょっと贅沢する話」というような、出来事だけ並べても「だからなに?」としか言いようがない本だ。そんな特別ではない日常の出来事の中で、登場人物が何をどういうふうに感じて、それを受け止めあるいは流しているのか、出来事ではなく感情を追い味わうタイプの本。
 昔はそんな本をどう読めばいいのかわからなくて、単におもしろくないと片づけていた。

 

 加納朋子さんの『てるてるあした』という本の中で、本のよさをこんなふうに表現した文があった。「登場人物の誰かが泣いていたりすると、ほっとするんだ。――ああ、ここにも泣いている人がいると、単純にほっとするんだ」と。
 これを読んだときに、ああそういう本の読み方があるのか、と初めて思った。今までも無意識にそういう読み方をしていたのだろうけれど、こうして文章になったものを読むと自分の中でもはっきりして、非常にすっきりしたのを覚えている。

 

 江國香織さんの本は、まさにそういう読み方のための本なのだと思う。
 別に悲しみに限らず、こうした状況でこんな思いを抱えている人がいるんだということを確かめるための本。別に登場人物と自分の感情が同調していなくてもいい。自分と違う考えがあるということに触れて、それでほっとするっていうこともある。ほっとするのではなく、反発や怒りを覚えたりすることもあるけれど、それも結局最後は「ほっとする」というところに落ち着くのではないかと。
 そうした読書がしたいときは、江國さんの本をまた借りてみようと思う。
 でもそういう気分じゃないときは、やっぱり「だからなに?」とか「どこがおもしろいのこれ」とか思うんだろう。

 

 

『あやまち』 沢村凛

 読み始めたときは、またかとちょっとげんなりした。
 『anego』→江國作品と続けて読んでいたので、「三十前後の独身女性恋人なし。仕事は生活のためにしているだけで生き甲斐ではなく、他に生き甲斐といえるほどの熱いものもない」という主人公には、そろそろ飽きていた。こういう状況にある女性の考えることは、書く作者が違って表現に用いられる言葉が違っても、だいたい結局は同じことなので、続けて読むとほっとするより飽きてしまう。
 けれど、この本は感情を追うのはもちろん、出来事の方も追える本だったので、途中からはすいすい読めた。 先に読んでいたものより、恋愛模様はずっとさわやかで温かく、主人公の屈折度も低いので、読んでいて疲れないし。
 タイトルの「あやまち」の中味はラストまでわからないが、その謎を追い求めるミステリというわけではない。「あやまち」を抱えた青年と主人公の恋模様と主人公の「あやまち」に対する態度を書いているので、「ここに、こんな人がいるとほっとする話」にもなっている。
 anegoに比べると主人公が前向きに積極的なので、読後感も悪くはないけれど、プロローグでラストが読めてしまうのはこの本にとってどうなのかなと思った。主人公の恋がどうなるのか、まったくわからない方が楽しんで読めたんじゃないかと思う。あと、主人公の親友「ケラッチ」の正体には意表をつかれた。主人公に対する認識がちょっと変わった。

 

 

『カノン』 篠田節子
 今度の主人公は、仕事にも家庭にも充実を感じている40代の女性。
 20代の頃の知人が自殺をし、その知人の遺品としてカセットテープを渡されてから、女性の回りで不可解な出来事が……という話。
 幽霊もどきも出てきて、表紙の見返しの紹介文には「ホラー」とあるけれど、ちっともホラーじゃないと思う。一般的な意味での「恐怖小説」じゃない。
 なんというか、一言で言ってしまえば「自分探し」とか「人生のやりなおし」に繋がる話なので、幽霊がらみの恐怖を味わいたいときに読む本じゃない。これもやっぱり感情を読む話なんじゃないかと。
 ただ、どれほど充実を感じ端からもそう見える人生でも、いくらでもひっくり返る要因があるのだと、その瞬間は誰にでも訪れるかもしれないものなのだと、それを恐怖と呼ぶのなら、ホラーと言ってもいいのかもしれない。
 あと、人生はちょっとした誤解と行き違いでいくらでも狂うのだということを、恐怖と呼ぶのなら。
 ホラーと書いてあったので、その心づもりで読んだら拍子抜けだったけれど、ホラーということを忘れて読めば面白かった。遺品に関する謎が少しずつ明らかになっていくのと、それに伴い主人公が変化していくのに引っ張られて一気に読めた。

 

 

『十三番目の人格(ペルソナ)』 貴志祐介

 第三回日本ホラー小説大賞長編賞佳作とのこと。
 主人公は、他人の強い感情を読み取ってしまうエンパスという能力者。その能力を使って心のケアにボランティアで携わっていたところ、多重人格の少女と出会う。その少女の十三番目の人格は実は……という話。
 直接主人公に命の危険が起こるわけではないせいか、恐怖感はそれほどでもなかった。けれど、多重人格の少女の謎を解く鍵が、ごく最初の方ででさりげなく出てきた「名前」にあったのは全然気付けなかったし、解決するための方法が主人公にはないことでハラハラもしたし、最後まで飽きずに読めた。エピローグの終わり方はホラーのお約束となっている。

 

 

『沈丁花の少女』 紗々亜璃須
 講談社White heart なので、作者の名前がいきなりキラキラしい(笑)
 単純にストーリィを追って楽しめる読書がしたくて借りてきた。江國さんもいいけれど、ああいう読書ばかりしていると疲れるので。
 中国神話をモチーフにしているので、封神演義や西遊記でおなじみの名前がごろごろ出てくる。殷周革命の妲己が敵のモデルらしいので、まさに封神演義といってもいいのかも?
 ただ主人公は仙女見習いの女の子。出自がわからないことで、本人は宙ぶらりんの感覚を持っている。敵の親玉が何だかわからないけれどとても怖いというのが、唯一の手がかり。
 なのだけれど、一応これが正体なんじゃないの? というのは読めばだいたいわかる。が、まだ1巻だからフェイクなのかもしれない。
 White heart なので、多分ロマンスも盛り上がるのだろうけれど、1巻はほとんどプロローグなので、恋に限らずなにもかもがこれからすぎて面白いのかどうかわからない。一応楊戩が相手役らしい。主人公の現在の思い人は太乙真人。そして主人公に幼い思いを寄せているのが、哪吒。
 2巻も読まないと本当におもしろいのかどうかわからないけれど、1巻で投げ出そうとは思わなかった。個人的にはイラストが好みでなかったのが残念。女の子はかわいいんだけどなー。男の人もふにふに丸っこいのがちと残念。

 

 

『西風の皇子(ディディウス)』 喜多みどり
 こちらはビーンズ文庫。
 ディディがかわいい! 以上(笑)
 とてもつもなく性格の悪い神様に、自分にはどうしようもないことが理由で命を狙われてしまった皇子さまのお話。単純に命を狙われたのではなく、魂の消滅までを願われてしまい、そのための手段が尋常ではなかったので、地上の滅びまでその背中に背負わされた皇子さま。
 でも、まだまだディディはお子様で、特殊能力があるわけでもないので、神様退治に乗り出す雄々しい勇者の話ではありません。何もできないのにそれを認めたくなくて意地をはっていたお子様が、何も出来ないと認めて、そこから成長するという、ありふれた王道話。
 でも、ディディと彼を護る女神メイが可愛いので、まっすぐなお話になっていて楽しく読めた。回りのキャラの性格は狙いすぎという感じもするけれど、うっとうしく思うほどではない。
 一応この巻で、事件は一段落。続きもあるとのことだけど、まあ読まなくてもいいかなと思った。ここで終わってもそれほど続きが気にならないほどの一段落をしているので。これで終わりって言われてもありだなと思った。

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