ここもロクの小屋
ちょっと思ったこと(WA3)
下の記事で書き忘れたこと。
せっかくだからリハビリを兼ねてみた。
馬を買った。2000ギャラは安くはないが、これからのことを考えれば高くはない。それに馬の名産地と言われるだけあって、4頭ともいい馬だった。いい買い物をしたと言えるだろう。財布の中身は心許ないものとなったが、それぞれの顔は苦くはなかった。
特にヴァージニアは大はしゃぎだった。穏やかな目をした白馬に真っ先に駆け寄り、わたしはこの子にするとその首を抱き寄せ鼻先に頬を寄せた。白馬の方もおとなしくされるがままになっている。
たかだか馬一頭のことでよくもまああれだけ大はしゃぎできるものだと、呆れ顔のジェットだったが、ヴァージニアが馬に名前を付けようと言い出すに至っては、つきあいきれないと首を振った。
「みんなそれぞれ毛並みが違うから、特徴を活かした名前がいいよね」
早速思案顔のヴァージニアを、ジェットは無視することにした。名前を付けたいなら勝手にすればいい。
しかしその場を去りかけたジェットを、ヴァージニアは放してくれなかった。
「ジェットの馬の名前はジェットが考えるのよ?」
「はあ? いらねえよ」
ジェットは言下にはねつけた。しかしその尖った声を聞いてもヴァージニアはめげるそぶりも見せなかった。
「だめよ。ちゃんと名前を付けてあげた方が、愛着もわくし、大事にしてあげられるでしょ? お馬さんだって名前を呼ばれた方が嬉しいわよ」
名前などつけたところで馬にわかるわけがないとジェットは思う。しかし何が一つ言い返せばその10倍は返ってくるのだとそろそろ身にしみてきた現在、ここで言い争うのも面倒だ。所詮口では敵わない。以前ギャロウズにもそう言われた。
ジェットの沈黙をヴァージニアは同意と見なしたらしい。
「ねえ、ジェットはどの子にするの? 決めないと名前を考えられないでしょ」
ジェットの顔に浮かぶ不機嫌の色に気づかないはずもないだろうに、ヴァージニアの口調にも表情にも全く頓着する様子がない。いや、ひょっとしたらこのお気楽なお嬢さんは、そもそも気づいていないのかもしれない。
あり得るな。
ため息をかみ殺してジェットは観念した。盛大なため息をこれ見よがしについてやったところで、どうせこたえたりはしないのだ。それならばとにかくこの不毛な会話を打ち切るしかない。
ヴァージニアの選んだ白馬を除いた三頭に目を走らせ、ジェットはやや小柄で俊敏そうな栗毛の馬の手綱を引き寄せた。
「その子にするの? ねえ、名前は?」
やはりあきらめる様子を見せないヴァージニアを横目でにらんで、ジェットは短く答えた。
「馬」
「え?」
「だから『馬』だ」
二回も答えてやったのは破格のサービスだ。しかしヴァージニアはそれをありがたがったりはしなかった。なによそれと素っ頓狂な声を上げて、猛然と異議をとなえてきた。
「そんなの名前じゃないじゃない。その子の特徴だって活かしてないし。もっと真面目に考えなさいよ」
「馬だから『馬』だ。充分だろ」
「そんなんじゃその子がかわいそうじゃないの!」
きゃんきゃんと賑やかな二人を見やって、クライヴは苦笑をこぼした。なんとも賑やかなチームに入ってしまったものだ。一人旅のときには考えられない。
「どうします? 僕たちも考えますか?」
残る一人のチームメイトに声をかけると、彼はすでに考え込み候補作をぶつぶつと口にしていた。
「オグリキャップ、いや、トウカイテイオウ、ディープインパクト……。ハルウララはさすがにまずいか?」
「……貴方に皆の財布を預けるのは止めておきますよ」
その後ジェットの馬が『馬』となったのかどうか、それはヴァージニアの粘りにかかっている。
――ジェットは馬に馬ってつけそうなタイプだなあと思いました。それだけなんですが(笑)
ジェットは、もっと突っぱってるのかと思ったのですが、チームになろうとヴァージニアが言い出したときに少し渋ったくらいで、後はそうでもないんですね。
ヴァージニアのせいで眉毛の兄貴にお宝を持って行かれちゃったときも、わたしのせいだと謝るヴァージニアに「まったくだな」の一言しか言わないし、マヤに痛いとこつかれてヴァージニアが落ち込んだときも「俺は抜ける」とか言い出さずに待っていてくれるし。
予想以上に可愛くて、プレイしていて楽しいです。