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エイプリルフールボツネタ(サヴァイヴ)1 

 日本語って難しいですね……(何をいきなり)

 

 書きたいなと思うものはあっても、いざ書き出してみると全然言葉が浮かばない。そんな日々を過ごしております。たぶん、だらだらしすぎなんだと思いますが。多少の緊張感があったほうが、脳も働くというものですよね。なんか勉強するといいのかしらん。

 

 まあそんなわけで、リハビリ。
 エイプリルフール更新の時、拍手に置こうと思ったんだけど間に合わなかった小話の推敲などしていたんですが、やっぱりどうしようもないぜ先に勉強でも脳トレでもやってきなという、そんな状態です。
 せっかくなので晒してみようと思います。

 


 

 初めて彼を見たとき、鳥のようだと思った。

 

 その時私は一人で座っていた。
 そこはとても広い部屋で、長くつながった机と椅子がさらに階段状に何列も並べられていた。隙間無く詰め込まれたそれらはいっそ窮屈に思えるほどであったが、一方の壁にかけられた大型のスクリーンの前にだけは、机のない空間がわずかばかり残されていた。スクリーンは非常に大きなもので、幅はほぼ壁と同じだけあった。高さは壁と同じとは言えない。上方には天井の高さにまで伸びていたが、下方は床に届かない。床まであったところで座席によっては見えないものもいるのだから、まあ当然だろう。
 私がもう少し成長していれば、そうした部屋は教室あるいは講義室という呼ばれ方をするのだ知っていたのだろうが、当時まだ就学前であった私がその部屋に抱いた感想は、コンサートホールのようだというものだった。ホールの椅子に机はなく、この部屋には舞台がなかったが、広く天井の高い空間がそのような連想を生んだのだろう。
 私は持参したリーダーシップマニュアルを机の上に出し、それを開こうとしてやめた。両手をひざの上に戻して視線をその上に落とす。
 ここが本当にコンサートホールであったなら、客席であれ舞台の上であれ、その場にふさわしい振る舞いというものを私は知っていた。しかしこのような所ではどのようにするのが正しいのかわからなかった。次々と部屋に入ってきては思い思いの席に着いていく私と同じ年頃の子供達の姿を視界の中に収めながら、私は手持ちぶさたでひどく退屈だった。いや、認めよう。私は心細かったのだ。見知らぬ場所で母とも父とも離れ、一人所在が無く、ひどく心細かった。
 私は机の上のリーダーシップマニュアルに再び視線を戻した。これは、この場所へ来るまでに読んでおくようにという言葉と共に父から渡されたものだ。言われたとおり私はこの本を熟読していた。しかし、この場で唯一馴染みの品といえるはずのそれは、どこに何が書いてあるか言えるほどに読み込んであったにもかかわらず、私の心を支えてはくれなかった。
 ともすれば震えだしそうな手を必死で抑えていた私に、不意に明るい声がかけられた。
「隣、いいかな?」
 思いがけない事態に驚き、私は勢いよく顔をあげた。するとそこには人なつこい笑みを浮かべた少年がいた。年の頃は、この部屋にいる子供はみなそうだったが、私と同じくらいで、明るく色素の薄い髪と澄んだ青い瞳が印象的だった。
「ここ、空いてるよね」
 重ねて問われ、私は自分が何の返事もしていなかったことにようやく気づいた。そして慌てて首を縦に振った。その席は空いているからそこに座ってもかまわないと、二重の肯定を一つの動作で済ませた随分とぞんざいな応対であった。
 しかし彼は気分を害した様子もなく、にこりと笑みを深くしてありがとうと私に礼を述べると席に着いた。そうして私と同じようにリーダーシップマニュアルを机の上に置いた。
 ああ、同じだ。
 机の上に並んだ二つのリーダーシップマニュアルを見て、私はそう思った。
 ここに来る子供は皆、事前にそれを配られ、また今日ここに持ってくるように言われているはずだ。私はそれを知っていた。彼もまたそれを持っているのは当たり前のことなのだとわかっていた。それなのに、それを見た私の肩の力は、随分と抜けていた。ああ同じだと思い、思ったことで心細さが和らいでいた。同じだったらどうなのかと尋ねられても答えようのないことだったが、ともかく私はここに来て初めて一息ついたのだった。
 私が落ち着くのを待っていてくれたのかもしれない。今ならそのように思う。彼が再び私に声をかけてきたのは、彼が席に着いてリーダーシップマニュアルを机の上に置いてからさらに少しの時間が経ったときのことだった。
「初めまして。僕はルイ。君の名前は?」
 屈託無く笑いかけてくる彼の様子に、私の口にも自然と笑みが浮かんだ。
「そう、メノリっていうんだね。メノリ、今日はよろしく」
 私の名を聞いた彼は、さらに明るく笑った。まるで見ている私の心に光を差し込むような、そんな笑顔だった。
 差し出された手を握り返しながら、私は彼を鳥のようだと思った。眩しくて思わず目を細めながら、大きくて白い鳥のようだと、私はそんなことを考えていた。

 それが、ルイとの出会いだった。

 

 

 ――なんでこんな話を考えたかというと、エイプリルフールだから「あり得ない」話を書いてみようかなと思ったというただそれだけだったんですけれども。だからちょっとキザっぽく始めたりしたんですけれども。
 ここからめくるめくロマンスが発展したら面白いんですが、考えるのが私ですからね。終わりまで書いたところで全然そんな話じゃないです。
 さーて、次なるリハビリは何をすれば。

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